私の今までの経験から『木造住宅の基本となる寸法の考え方』について結論から書くと、従来の『尺モジュール(基本寸法 91cm)』ではなく『メーターモジュール(基本寸法 1m)』がオススメだと思います。
『モジュールとは?』わかりやすく簡単に書くと…
・91cmグリッドで考えるか?
・1mグリッドで考えるか?
ですが、この『9cm』の違いが大きなゆとりとなり、出来上がった建物の使い勝手や将来性に大きな影響を与えます。
詳しく説明していきましょう。
今まで私は、尺モジュール(91cm)もメーターモジュール(1m)も両方体験してきました。その経験から言えることは『メーターモジュール(1m)』で計画することを強くお薦めします。たった9cmの違いですが、出来上がった空間から感じる『広さ』が全く違うからです。
更に下記のことも言えます。
・今の日本人の平均的な体型は、昔に比べると一回り大きくなっていること。
・平均寿命が延びることで、手摺や車椅子などに対応できるような備えが必要。
つまり、これらのことに対応出来る寸法的な『ゆとり』が必要だからです。
具体的に廊下や階段の幅を、尺モジュール(91cm)とメーターモジュール(1m)で比較すると、下図の通りです。
いかがでしょうか!
有効幅の違いが良くわかると思います。
現在の木造住宅に限ってになりますが、一番多いのは『尺モジュール(91cm)』です。その原因は、恐らく木造を設計する人の多くが、メーターモジュール(1m)で設計した経験が無いからだと思います。だから『狭い狭い…』とわかっていても、普段から慣れ親しんだ尺モジュール(91cm)で設計しているのです。
あるいは『材料が尺ベースになっているから…』という人もいますが、メーターベースの材料も同じように出回っていますし、コストもさほど変わらないので問題無いでしょう。
更に言えば、現在は防火地域でも木造住宅を建てることができるようになりました。その場合は木造耐火構造にする必要がありますが、壁に厚みのある耐火ボードを2重貼する部分が出てくるので、尺モジュール(91cm)で計画すると非常に狭くなってしまい住空間として成り立たなくなります。
またマンションなどのRC造(鉄筋コンクリート造)やS造(鉄骨造)では、特に決まったモジュールがあるわけでもなく、逆に『有効寸法(内法)をいくつとりたいのか?』逆算して寸法を決めていきます。
だからマンションなどは、尺モジュール(910mm)つくった木造住宅に比べ、ゆとりや広さを感じるのです。
【まとめ】
何も考えず当たり前のように昔の基準である尺(910mm)で設計するのではなく、メーター(1000mm)を基準としたり、有効寸法(内法)から逆算して狭くても850mm(85cm)確保できるような計画を心がけることが、とても大切でしょう。それが、結果的に長く住める家になり資産価値を高めることにも繋がると思います。
以上のことから『どのような寸法で考えているのか?』お客様自身で担当の設計者に確認することも大切です。